日銀正副総裁発言 金融市場揺らす 

2023年12月09日

日本銀行の正副総裁から大規模な金融緩和策の「出口」を意識した発言が相次ぎ、マイナス金利を早期に解除するとの観測が金融市場で強まっている。発言を受けて長期金利が大幅に上昇し、円買いドル売りが進んでいる。為替相場は7日に一時1ドル=141円台をつけ、日経平均株価は8日までの2日間で1100円超下落。18、19日の金融政策決定会合でマイナス金利を解除する可能性は低いとみられるが、市場は警戒感を強めている。

 

7日の参院財政金融委員会で、日銀の植田和男総裁が「年末から来年にかけて一段とチャレンジング(挑戦的)な状況になる」と発言。その後に岸田文雄首相と会談し、市場で日銀が早期にマイナス金利を解除するとの見方が広がった。

 

6日には氷見野良三副総裁が大分市内の懇談会で、「賃金と物価の好循環をよく見極めて、出口のタイミングや進め方を適切に判断する」と発言。「出口を良い結果につなげることは十分可能」と述べた。

 

これまで日銀の正副総裁が出口に言及することは少なかったが、物価が上振れする中、賃上げの動向が見える状況が近づき、微妙な変化が出てきた。「出口に向けた地ならしではないか」との憶測が出ている。

 

出口の条件は2%物価安定目標の達成だが、来年の春闘の賃上げが重要なポイントになる。日銀は賃金と物価の好循環を確認してから動くとみられるが、植田氏が「年末から来年にかけて」と発言したため、年内か年明けにマイナス金利を解除するのでは、との見方が広がっている。

 

野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「(年内か年明けのマイナス金利解除の)可能性は高くないが、ゼロではない以上、油断せず注視が必要だ」と話す。

 

一方、日銀内には早期の政策修正に慎重な見方もある。中村豊明審議委員は11月30日に神戸市で記者会見し、「今、政策修正に対する意思決定をするタイミングではない」と述べた。

 

米連邦準備制度理事会(FRB)は12~13日に邦公開市場委員会(FOMC)を開くが、金利を据え置くとの見方が優勢だ。市場の関心は、いつ利下げに転じるかに移っている。

 

その後に開かれる日銀の決定会合で、出口について踏み込んだ議論が行われるかが注目される。

 

 

 

 

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